 | | 炎を灯します! |
 | ショウコ | い、今開けるから…… って、 アカネさん!? |
 | アカネ | はい、アカネさんです!! |
 | ショウコ | ち、違う……そうじゃなくて、 体……ボロボロ じゃないか……! |
 | アカネ | そうですね! 本日、 公式ファイトの一回戦 だったんですが…… ボロ負けしてしまいました! |
 | 体は平気です! 一撃でのされたような ものなので! ただ…… |
 | 正直、今までで一番悔しい ですね。ショウコちゃんと また戦いたいと思って いましたし。 |
 | それ以上に……私も、もっと 強くなりたい、強くならなきゃ と思っていたので。 |
 | ショウコ | アカネさんだって、強い じゃないか……。なのに、 一回戦で負けるなんて…… |
 | アカネ | シューコ。 |
 | ショウコ | え……? |
 | アカネ | 私が一回戦であたったのは、 シューコさんという方でした! 本島の研究機関から来た方で、 優勝候補と噂されています。 |
 | ショウコ | そうか……。 |
 | アカネ | 島のみなさんが、不安になって いるんです。もしや、研究機関 にこの島を乗っ取られてしまう のではないか。 |
 | 私たちの、汗と涙とファイトと 情熱の日々が、終わってしまう のではないか、と! |
 | ですから、私が代表で ショウコちゃんを呼んできて ほしいと頼まれたんです。 |
 | みなさん、希望を託している んですよ。シューコさんに 勝てるのは、最強少女の ショウコちゃんだけだと! |
 | ショウコ | む、無理だ…… 私じゃ……アイツには、 勝てない……。 |
 | アカネ | 何故ですか! 最強無敵のチャンピオンが そんな弱気じゃ―― |
 | ショウコ | 私はもう最強じゃないッ! 孤独でもなければ、 強くもなくなった……。 |
 | シューコさんとは……一度、 戦ってるんだ。戦って…… 負けた……。 |
 | 今の私は、コズエ……研究機関 にいた少女の能力で、 孤独じゃ なくなったらしい……。 |
 | もう、誰かに勝つなんて、 無理だ……。アカネさんとも、 二度と拳を交えることは ない……。 |
 | アカネ | ……ショウコちゃん、あなた、 何を言ってるんですか? |
 | ショウコ | アカネさんの怒りも、 わかる……。こんな…… 独りで逃げるようなヤツ…… 私だって、大嫌いだ……。 |
 | アカネ | そうじゃありません! |
 | ショウコちゃんは、孤独 じゃない。……いえ、正確には 孤独であろうとしていただけ。 孤独なんかじゃないんです。 |
 | 孤独であろうとしたから、 身体能力は向上しました。 でも、その後のバトルスキルは 努力で磨いたもの。 |
 | 少なくとも、私はそう 思っています。 |
 | ショウコ | アカネさんに……私の何が わかるんだ……。 |
 | アカネ | これでも、ショウコちゃんの ことは少しだけ、知っている つもりですよ。 |
 | 拳を何度も合わせる前―― ワカバさんの家に遊びに 来ていた頃から、ずっと。 |
 | ショウコ | どうして、アカネさんが ワカバさんのことを……。 |
 | アカネ | ショウコちゃんは、ずっと 机の下にいましたからね。 気づかなかったかも しれませんが、 |
 | 当時は、私もよく遊びに 行っていたんですよ。 |
 | ショウコ | じゃあ……家に、強盗が 押し入ってきた日も……。 |
 | アカネ | ええ、いました。だから 知っています。ショウコちゃん がワカバさんを守ろうと、 一目散に駆け出したことも。 |
 | ショウコ | ……そんな、綺麗な話じゃ ない……。私は、途中で 逃げたんだ……!怖くて 頭が真っ白になって……! |
 | みんなを置いて、自分で守る つもりだったワカバさんまで 置いて……自分だけ、 逃げ出したんだ……。 |
 | ワカバさんにも、アカネさん にも、恨まれたって しかたない……。 |
 | アカネ | ……私はもちろん、ワカバさん が恨むなんて、そんなこと、 ありえないでしょう! |
 | ショウコ | どうして、そんなことが 断言できるんだ……! |
 | アカネ | ワカバさんは優しいからです。 彼女は優しく、孤独でも なかった。だから、この島では 弱者だったんでしょう。 |
 | けれど、心はとても熱く、 強い人でしたよ。いつも 私たちのお姉さんであろうと していました。 |
 | ショウコ | でも、アカネさんは見て ない……!ワカバさんは、 ずっと叫んでたんだ! |
 | 私に、「早く助けて」 って……! |
 | アカネ | そして、ショウコちゃんは 自分は逃げ出してしまった んだと思った。 |
 | 罪悪感と、強くなりたいと いう気持ちから、独りを 選んだ……違いますか? |
 | ショウコ | そ、そうだ……。情けない 自分が嫌で……強く なりたくて……独りでいた。 |
 | アカネ | 私は前提が違うと思って います。あのワカバさんが 危険な状況で、守るべき 妹分に助けを求めるか―― |
 | 答えは否です。 ワカバさんも、ショウコちゃん と同じように、守りたかったん だと思います。 |
 | だから、早くの後は「助けて」 ではなく、「逃げて」だった。 ならず者たちの気を引き、 ショウコちゃんを逃がした。 |
 | そう考えては、いけませんか! |
 | ショウコ | そんなのは……ただの仮説だ。 私に都合がいいだけの、 甘い考えだ……。 |
 | アカネ | そうかもしれません。 でも、否定する材料は 何もないでしょう? |
 | ワカバさんと同じように、 ショウコちゃんも、優しくて 熱い人です。だから、今日は お願いにきました! |
 | ショウコ | またその話か…… 大会に出ろっていう……。 |
 | アカネ | ええ、それは島の人たちの 願いです。 私のお願いは…… ショウコちゃんが、 シューコさんと戦うこと。 |
 | ショウコ | 同じことじゃないか……。 |
 | アカネ | 少し違います。 戦って、彼女の 孤独を溶かしてほしいんです。 |
 | 一回戦で戦った時に感じ ました。あの人が抱える 寂しさは、ショウコちゃんの 寂しさと同じです。 |
 | 独りは寂しいと思いながらも 孤独の道を選んでいる……。 その理由はわかりません。 |
 | しかし、あの強さが示す通り、 シューコさんも孤独 なんでしょう。 |
 | ショウコ | 優しい、アカネさん らしいな……。でも、私は もう強くない……きっと 負けてしまう……。 |
 | 島のみんなだって、がっかり する……それでも戦え っていうのか……? |
 | アカネ | コズエちゃん……でしたっけ? 彼女、バトルが終わった後、 私に訊いてきたんですよ。 |
 | ショウコちゃんは元気に しているかって。その後、 シューコさんと一緒に 帰っていきましたが。 |
 | 私、ピンときました! 最近、 ショウコちゃんが早く帰って いた理由……彼女と仲良く なったからだったんですね。 |
 | ショウコ | ……だけど、彼女は研究に 使われていた子で……彼女と いるから、私は弱くなって しまって…… |
 | アカネ | もう! 強さとか孤独とか、 トモダチと一緒にいるのに、 理由なんていらないでしょう! |
 | それに、研究に使われている なんて、トモダチなら、 許せない状況なんじゃ ないですか!? |
 | 迎えに行って、それから シューコさんに怒ってきたら いいんですよ! |
 | 「私の大切なトモダチを、 研究の材料なんかに するな!」って!! |
 | ショウコ | トモダチ……私と、 コズエが、か……? |
 | アカネ | それ以外に、どんな言葉が あるっていうんですか? |
 | ショウコ | トモダチって、そんな簡単に なれるものか……? もっとこう……交換日記とか、 順序が……。 |
 | アカネ | いりませんよ、そんなの! ショウコちゃんが、 ワカバさんと一緒にいた時を 思い出してみてください。 |
 | 名前を呼んで、一緒に 遊んで……仲良くなれたと 思ったら、もうトモダチ なんですよ。 |
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